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ぎくりと肩を揺らして、恐る恐る後ろを振り返る。
暗い茂みから覗く紅いねとりと光るそれ。
(あれは目だ。)
その紅いモノから刺すような視線が放たれる。
ざわりと警告するように、首の後ろを寒気が襲った。
剛太は目を瞑(つむ)るようにして、それから視線を外し、転げるように走り出した。
闇雲に、足掻くように。
恐怖は間近に迫っていた。
ざわざわと背中に虫が這いずるような悪寒が付き纏(まと)う。
だが、目の前に明るい木々の切れ目が見えた。
(ああ、きっと出口だ。)
訪れた希望の光に、先程よりも力強く足を前へと送り出す。
「あれ? 剛太君、どうしたの? こんなところで。君も山菜採りなの?」
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