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明るい日差しの中で笑う少女、橘魅夜(みや)の姿に、剛太は一瞬安堵(あんど)したものの、次に襲ったのは深い絶望だった。
(駄目だ。魅夜を巻き込んでしまう!)
けれど背後には蠢(うごめ)く災いの群れ。
その板挟みに剛太の足は走るのを止めてしまった。
しかし、剛太の様子に気付いたのか、森に蠢くモノに気付いたのか、魅夜はさっと顔色を失(な)くし、彼に手を伸ばした。
「何やってるの!? 逃げるよ!!」
剛太は歯をぐっと食いしばり、その手を取った。
*
寂れたアーケードを街と呼ぶ、やや田舎に片足突っ込んだような町に剛太が越してきたのは、丁度夏休みに入ってからの事だった。
夏休みだろうが、平日だろうが、学校へ行ってなかった剛太には、それほど気にするところでもなかったが。
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