鬼の住処

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暑くなりそうな気配を感じさせる空の青。 それに映える真っ白なワンピースを着た少女は、日本人形のように真っ黒なストレートの髪をふわりと踊らせて、剛太を覗き込むように、腰を屈(かが)めて顔を見上げた。 「何?」 硬い声にも、暑さを感じさせない、涼しい笑顔は消えない。 「あ、れ。見えるんでしょ?」 ここ数年、何の運動もしていない事を示すような華奢な肩がびくりと揺れる。 剛太が少女の指す方に、人より色素の薄い茶色の目を向けると、そこには半透明のふわふわと浮かぶ、いわゆる人魂が二つ、漂っていた。 「見える人、久しぶりに見た。」 嬉しそうに目を弧にする少女は、名を橘魅夜と名乗った。 * 魅夜の手を取ると、彼女は引き摺(ず)る様に、剛太を引っ張り森を駆ける。
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