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奇妙な何かの動物のような鳴き声に振り返ると、そこには小人のような、けれど可愛い雰囲気などしておらず、腕と足は骨と皮だけのように細く、腹はぽってりと出て、顔中皺(しわ)だらけのそれは居た。
全身土気色の中で大きな瞼(まぶた)も無い目がとろりと紅い。
足元に群がろうとするそれを、剛太は思わず蹴り上げて、踵を返し逃げ出した。
(ああ、あれは鬼だ。)
暴れる心臓を押さえ付けるように、緑のプリントシャツを強く握り締めた。
*
魅夜と剛太が親しくなるのに時間はかからなかった。
人魂や幽霊なんてモノは百人が百人知っている言葉であるにも関わらず、それを見る者は殆(ほとん)ど居ないと言って良い。
人は自分の理解出来ない者、著しく違う者を弾く傾向がある。
それによって自分の世界を守ろうとするのだ。
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