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「最初はグッと出すアホがいるっ!」
「ぬああああっ、負けた!」
「やりーっ、昼飯いただきっ」
そんな騒がしい男子生徒達の声が聞こえたのは、僕が腹痛を堪えながら机に伏している昼飯時だった。
退院したての僕には、その煩さが少し厳しい。
どうして男子は放課になると騒ぐんだろう。
その真意は到底僕なんかには理解できないんだろな。
保健室…行こう。
生まれつき体が弱くて、物心の付いた時には既に原因不明の頭痛や腹痛に襲われていた。
だから教室に居る時間なんて短くて、保健室に居る方が長いと思う。
そのお陰で友達なんて出来たことがないんだけど。
腹痛に顔を歪めながら保健室へと移動するために僕は顔を上げた。
その時だ。
「うぐ…っ?」
何かが僕の頭へと直撃し脳を大きく揺さぶられる。
椅子からバランスを崩さなかったのは、運動音痴な僕の不幸中の幸いだったかも知れない。
「わわ…ごめん咲哉くん!大丈夫だった?」
僕にぶつかり、音を立てて落ちた筆箱を一瞥して隣の席の女子が僕の顔を覗き込んだ。
「大丈夫…」
何故か腹痛が痛みを増し、お腹を押さえる手に力が籠る。
大丈夫に見えるかな。
「よかったぁ」
「だから筆箱ぐらい投げないで置きに行けって言ったのにー」
筆箱の持ち主の友達らしい女子が、不服そうに声を上げた。
「咲哉くんは退院したばっかなんだからさ」
何だろう。
言い方が少しわざとらしい気がする。
慣れちゃいるけど、わざとらしい。
「本当…大丈夫だから」
此処に僕の居場所なんてないんだ。
その場を早く去りたくて僕は席を立った。
こうゆう時は保健室に限る。
腹痛は一向に収まる気配はなかったけれど、何とか三階から一階の保健室前までたどり着いた。
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