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半年病院に居た訳だが、どうも慣れ親しんだ保健室の扉をカラカラと乾いた音を立てて開いた。
「失礼します…」
入った先にあるのは半年前と全く変わらない、保険医のお姉さん。
緩やかなパーマがかった黒髪に、薄いメイクで誤魔化した細い瞳が特徴的で本当に優しい先生だ。
そういえばクラスの男子が、可愛いって噂してたっけな。
僕が保健室に向かう度に小突かれた。
あまりタイプではないんだけど。
「あらー、久しぶりね。二年三組の春宮咲哉くん?」
そう言って先生は笑う。
半年前と変わらない優しい微笑みで。
「クラス覚えててくれたんですね、鈴村先生」
「当たり前じゃない、言っちゃ悪いけど担任の先生はがさつ過ぎて咲哉くんの事をあまり考えてないみたいだからね」
確かに担任は体育会系の先生で、豪快なところがあるのを覚えてる。
鈴村先生の凄い所は、そうゆう細かい所まで気を配れる所だろう。
保険医が鈴村先生じゃなかったら、僕は保健室に来る事は無かっただろうし。
「入院すれば少しは良くなると思ったけど…やっぱりまだ体調不良は続いてる?」
「…はい」
僕がそう答えると先生は項垂れる様にして自分の椅子に座った。
「そっか…、とりあえずベッド使いなさいね。一体何が原因なんだろう…」
座り際にベッドを囲うカーテンを開けてくれたので、僕はそのベッドに寝転んでただ天井を見つめることになった。
「咲哉くんー、入院して何か変わった事あった?」
「クラスと席くらいです」
「そうじゃなくてー。そうゆう所は変わんないねえ」
「先生も見た目は全然変わりませんね」
生徒の為なら自分も頭を抱えて新味に助け様とする所も変わっていないな。
「あら、それって誉め言葉かしらー?」
嗚呼、此の感じだ。
半年しか経ってない訳だけど、懐かしく感じるこのやり取り。
やっぱりこの桜が見えにくい学校も暖かな先生も、何も変わってないんだ。
これからも…変わらないでいくのかな。
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