第三章:ヴァンパイア様

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「はい。そうです。私、高校を卒業してすぐここに引っ越してきて。 この地域に引っ越して来た理由のひとつがヴァンパイアカフェとclub vampireが近くにあったからなんです」 「それだけの理由で決めたわけ?」 「それだけって!!全国にはヴァンパイアをイメージしたお店が何店舗かありますが、この2つが圧倒的なんです! そして、club vampireのクチコミに、まるで本当のヴァンパイアだ、とか、吸われたとか色々書いてあったんです……」 「……信じたの?それ」 「はい。少しでも可能性があるならば、と思いすぐに行って来ました。 ……それが間違いでした」 当日のことを思い出し、すごく嫌な気持ちになってきたが、続けた。 「あんなのはヴァンパイアじゃありません。ただのギャル男ですっ!」 だんだん怒りが込み上げてきて、自然と早口になってしまう。 「店名にヴァンパイアをつけるなら、もっとヴァンパイア感を出すべきです! あんなお店にヴァンパイアなんて名乗ってほしくありません!」 当日に起こった出来事を思い出し、怒りで興奮したきたところでヴァンパイア様が口を開いた。 「……求めすぎだろ。で、それがヴァンパイアカフェに来たことがなかった理由と関係あんの?」 「大アリですよ。あんなに期待したのに……。 だから、ヴァンパイアカフェも名前だけなんじゃないかって。 そう思うと、やっぱり黒魔術で召喚したほうが確実かな、と思いまして」 「どう考えても黒魔術のほうが不確実だろ」 「でも、会えました!」 私は満面の笑みで答え、話題を戻す。 「そして、あの……ヴァンパイア様は、ヴァンパイアカフェなんて私が知ったら興奮しすぎると思ってあんなに渋ってらっしゃったのですか?」
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