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「お昼どうする?」
「お蕎麦かうどんかなー」
仲間と近くの定食屋へ。
これも変わらないいつものパターン。
「いらっしゃ~い!」
威勢のいい声が響く。
空いた席はないかとぐるりと店内を見渡す。
「あ…」
思わず声が出た。
『彼』がいた。
「何?どしたの?」
声をかけられてもしばらく動けなかった。
ハッとして気をとりなおす。
「えっ?何でもないよ。どこ座る?」
えへへと笑いながらあたしの胸はざわついていた。
メニューを眺めながらも、泳ぐあたしの目。
(今まで会ったことないこの店に、なぜ『彼』が?
)
『彼』は同じ会社の人らしき男性と二人。
パンフレットや地図を出して話している。
営業かな。
仕事モードの『彼』は、いつもの本を読む姿とは別人で…あたしは瞬きも忘れて見つめていた。
「お待たせしました~!
山菜そばですね~」
店員の声があたしを現実に引き戻す。
(だめだ、これじゃストーカーになっちゃう!
何とかしなくちゃ!)
そんな事を考えながら、目の前の山菜そばにただただ柚子胡椒を振り続けるあたしを、唖然として眺める同僚の視線には気付かず、あたしは決意を固めていた。
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