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「フフフ───いるいる。
人間が、あんなにたくさん……」
女の眼は地上の人間一人一人を見ている。その人間達を品定めするように、女の視線がねっとりとまとわり付く。
今、地面を歩いている人達は気づかないだろうが、女が見下ろしている地域の気温が、微かに下がっていた。
「さぁ~て……?どれに……しようかな……?」
やはり品定めでもするかのような口調と視線で街を見渡す女。その眼に映っているのは様々で、疲れ気味のサラリーマン。仲良く肩を並べて歩く女子高生。友人、仲間と無駄話を楽しみながら屯っている青年達。子連れの親子に仕事帰りのキャリアウーマンと、どれ一つ逃すことなく、女の瞳には反映されていく。
「…………?」
その中で。
「……?んん~~~~……?」
ふと、女の眼にある光景が飛び込んできた。
それは明るい色に染められた街とは真逆に、夜の闇に支配された裏路地の、上からでなければ見ることができないほど入り組んだ地形によって構成された、いわば隔離されたスペース。
そこで揉み合うに動き回る三つの人影。
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