0人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
安崎透弥
ここはどこだろうか、暗くてなにも見えない。
体が重く、思うように動かない。まぶたが閉じていることに気付く。不思議とそこだけは簡単に動くような気がした。
目を開けると、見覚えのない天井が映った。
本当にここはどこだろう。戸惑いながらも、目を動かすと、周りから声が聞こえた。そこで、人がいたことに気がついた。
何を言っているのか聞き取れなかったが、誰かと話しているようだった。
「気がついたようね、透弥君」
その人は、僕に向かって聞きなれない名前で呼んだ。――僕は困惑した。誰のことだろう、その疑問が頭に浮かんだ。
「喋れるかな、透弥君?」
その人は僕の傍により、再び同じ名前を使って、僕を呼んだ。
「ちょっと……待ってください。僕の名は……康希ですよ?」
口がうまく動かせない、そして自ら出した声に違和感を持ったが、気にせず続け、その人に、たどたどしい口調で僕の名前を伝えると、困惑したような表情で、僕を見ていた。そして、もう一人の方に声をかけ、何かを伝えていた。
しばらくすると、ドアの開く音がして、誰かが入ってきた。
その誰かは、さっき僕に話かけた人と話していた。会話の内容は聞こえなかったが、会話から聞こえる声に、聞き覚えがあった。
誰かが僕の近くに来るような音がした。その誰かが僕の視界に捉えた。
最初のコメントを投稿しよう!