ココロガワリ

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「……父さん」 彼は私を見ると私に向かって言ってきた。それを聞くと、私を含め周りは困惑した。私は少し考えると、ある仮説が浮かんだ。その仮説を確かめるため二人の看護師を部屋から出させた。 「まさか、康希か?」 二人が部屋から出たのを確認し、彼に向って息子の名前で呼んでみた。 「父さんまで……何言っているの? さっきの人も……僕のことを透弥と呼んでいたし、透弥って誰のことなの?」 彼の答えは、はっきりとは言わなかったが肯定の意味を持ち、私の仮説は当たっていたことがわかった。――彼は透弥ではなく、私の子。原因はわからないが、康希は透弥の姿となっていた。 「いいか、よく聞きなさい。今の康希は、康希の姿をしていない、透弥君の姿になっている」 私がそのことを告げると、彼は疑わしげな顔で私を見ていた。そこで、持っていた鏡を取り出し彼に見せた。 「鏡に映っているのが、康希の今の姿だ」 私は、鏡を見ていた彼にその事実を告げた。そして、続けさまに、彼に今の状況と透弥のことを説明した。 説明を終え、私は透弥の家族には記憶喪失と伝えるから、話を合わせてくれと、康希に頼み、返事も聞かずに部屋を去った。そして、私は先程部屋から出させた二人に事情を話してから、康希のいる病室に向かった。
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