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ルカが20歳になったからと、鳴川はカクテルバーに連れて来てくれた。
「うわ~、なんか急に大人になった気分。素敵」
「やっとお酒飲める年齢になったからね。せっかくなら、最初からハードル上げておいた方が良いかと思って」
「何それ。意味わかんない」
「わからなくて結構。じゃ、まずはルカちゃん、成人おめでとう。やっとアルコールで乾杯できるよ」
「ありがとう。でも乾杯だけだよ。まだお酒の美味しさなんてわかんないんだから」
「そんなの、これから僕がゆっくり仕込んであげるさ」
「えー。大丈夫かな?。違うもの仕込まれたりして」
「違うものって? 他に仕込んで欲しいものでもあるのかな?」
鳴川は意地悪な目付きでルカを除き込む。
「う~ん。やっと大人になったから、大人の遊びを覚えたいな?」
今度はルカが上目遣いで鳴川を除き込む。
「大人の遊びか……。僕もあんまり遊んでないからなぁ」
「うそつきぃー!」
「ほんとだよ。僕は真面目なのが取り柄だからね。そう言えばルカちゃん、この間、告白されたって言ってたけど、その後の進展はどうなったのかな?」
「えっ……。あ、うん……。まだ返事してなくて……」
「どうして? その彼の事、好みじゃないの?」
「好みじゃないわけでもないんだけど……。優しいし、ちょっと照れ屋さんみたいでかわいいとこあるし……。でも、何となく気乗りしないって言うか、ときめかないって言うか……。こんなあやふやな気持ちで付き合っちゃっていいのかなーって思って」
「ときめきって、ズキュンって来る時と、ジワジワゆっくり来る時があるんじゃないかな? もしかしたらその彼はジワジワタイプかもよ?」
「ジワジワタイプ? なんか、ねちっこい言い方だね」と笑った。
「最初から好きになるよりも、ゆっくり相手を知って行く方が、長く付き合えるんじゃないのかな~? まあ、いろんな形があるから一概には言えないけど」
ルカは今までも数人から告白されて来た。だが、全く付き合う気持ちになれず、全て断って来た。理由は“好きなひとがいるから”だった。実は告白された事を鳴川に話したのは、今回が初めてだった。
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