二十歳

5/6
前へ
/92ページ
次へ
「鳴川さん……、あのね……。実はルカには好きなひとがいるの」 「えっ! そうなの? 早く言ってよー。だったら迷ってないで、告白しちゃえばいいじゃない?」 「そんな簡単に言わないでよ! 告白出来る相手なら、とっくに伝えてるよ!」 「ん? 告白出来ない相手なの? ――――あっ……彼女いるとか?」 「う、うん……。まあ、そう言う事なんだ」 「そっかー。そりゃまた、ちょっと辛いなあ…………。で、諦めるつもりはないの?」 「諦められないから辛いんじゃない! 好きな気持ちは止められないもの」 「だよね。でもね、ルカちゃん。片思いを楽しむのも悪くないよ? 両想いになっても、最初は楽しいけど、やきもち妬いたり、わがままになったり、心配要素が増えてくるからね。マイナスな部分が見えて来ない今が、ひとを見る眼を育てる時期なんだよ。まだまだ若いんだから」 「慰めてくれてるわけ?」 「慰めてるって言うか、一理説だよ。僕なりのね」と優しく笑う。 「鳴川さんは成就しなかった恋愛はあるの?」 「もちろんだよ。だけど、僕は潔いからね。断られたら、直ぐに引いてあげちゃうタイプなんだ」と言って、今度は高笑いした。 「それ、潔いって言うの~?」 「後を追わないんだから、ある意味男らしいだろう?」 「内心は結構引きずってたりして?」 「――あれ。わかっちゃった?」鳴川は笑いながら、「僕は押しが弱いタイプなのかもな」と苦笑いした。 「ルカは諦めが悪いんだね、きっと!」 「無理に諦める必要もないけど、ルカちゃんは、その彼をどうにかしたいと思ってるの?」  どうにかしたいも何も、どうする事も出来ないだろ。相手は彼女じゃなくて、妻なんだから。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加