幸せの始まり

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 実は栄樹が戻って来た時、ルカの表情が何か変だったから、先輩である江田美代子に何気なく聞いてみたのだ。 「私が知りたいくらいだったわよ。でも彼女って、聞いても話さないタイプでしょ? プライベートに関しちゃあ、謎だらけだからね。でも、あんな表情の鷲尾さんは今まで見た事なかったから、余程の事があったんじゃないかって、噂してたんだけどね。ご家族は健在らしいし、恋人に裏切られたんじゃないかって……。だけどいくらなんでも、あそこまでは落ち込まないでしょ? って事になって。結局、真相はわからないままだったわ。でも、誰にだって触れられたくない事はあるものよね。1年くらいは元気なかったけど、仕事もちゃんとしてたし、随分元気になったのよ? 気になるんなら、自分で聞いてみたら?」  やはりルカの身には、何かが起こっていたのだ。それを自分の中にだけに仕舞い込んでいたのだろう。  ――力になりたい――。  栄樹の直感が行動を起こした。  そして、栄樹が誘った一言から、ふたりの付き合いが再び始まる。彼氏とは、別れてしまったんだと伝えていたルカが、事実を告げて来たのは、それから1年後の彼の命日だった。栄樹はルカをひとりにしてはいけない気がして、ルカを輝明の部屋から出し、栄樹のマンションに呼び寄せた。本社勤務になると同時にひとり暮らしを始めていた栄樹。転勤先でのひとり暮らしが快適だったため、母親の反対を押し切って、マンションを借りたのだ。
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