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「分かんねぇ。でも、多分そう。」
「なんだよ~。あんな子と同じクラスなんて。」
「良いだろ。じゃあな!」
4組の俺は、自分のクラスに入り、別のクラスの大智は1組へと戻った。
4組のドアには、人だかりになっていて、クラスに入るのがやっとだった。
クラスには、半分くらいの人がいて、ちょうど真ん中の席に座っているあの子を取り囲んでいる。
俺の席は…。
と、黒板に貼ってある座席表を見る
…!?
自分の席に、思わず目を見開く。
それから、座席表と座席表に表示された実際の自分の席を交互に見る。
そして、そのことが夢ではないと自覚すると思わず、顔がほころぶ。
嘘じゃない。
俺の席は、あの子と隣だ…。
にやけそうになる顔を抑えながら、自分の席へと歩く。
俺や、周りの席には、女の子が座ってあの子を囲んでいる。
“ピタッ”
自分の席に来たところで止まった俺に気付いたのか、俺の席に座っている女の子は背中ごしに振り返り、俺を見る。
視線がパチッと合うと、目を見開き口を開け呆然としている。
「そこ、俺の席なんだけどいい?」
「…………」
無言で席を立つ女の子。その顔は、なぜか赤く染まっている。
どうしたんだ?隣
の席はガヤガヤしてうるさいし…
でも、そんなことどうだっていい。
美少女と、隣になれたから!
準備をしながら、横目で隣の子を見る。
本当に、人気者だなぁ。
まぁ、こんなに美人なら当たり前か。
でも、中心にいるその子は、あからさまに楽しそうじゃない。
女の子から「可愛い」、「綺麗」と言われると、素っ気ない顔で「そんなことないわ。」。
なぜだろう?
一時間目、少し肌寒い体育館で入学式が行われ、入学式後はクラスごとの写真。
その後の二時間目では、自己紹介。
一人ずつ名前、生年月日、出身校、特技or好きなことを発表していく。
あっ…!
そのとき、俺はふと思った。
そういえば俺、まだ隣の子の名前知らなかったんだ。
名前、何ていうんだろ?
“ガタッ”
そのとき、隣で椅子を引く音がした。
『私の名前は、八神・紗莉(さり)で出身校は、星川小学校です。誕生日は、7月1日です。得意なことは、バイオリンです。よろしくお願いします。』
彼女は無表情のままそう言って、また椅子に座った。
八神紗莉…。なんて可愛い名前なんだ。
結構、この一時間は八神さんの事ばかりで、他の子の名前なんて聞こえなかった。
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