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チャイムの鐘と同時に、一時間目が終わった。
案の定、休み時間が始まったと同時に八神さんの席には、クラスのほとんどの人が集まり、あっという間に話の中心に。
「八神さん、これからよろしくね!私は、安藤琴美。琴って呼んで!」
「俺、佐藤悠。よろしくな!」
次々と、一方的にはなしかけるクラスメイト。
でも、八神さんは顔色ひとつ変えないままだ。いや、どちらかというと少し怒っているように見える。
俺は、そう思いながら二時間の用意をしていた。
すると―、
“ガタッ”
隣で椅子を引く音がした。
俺はびっくりして何事かと隣を見る。
彼女が机に両手をつけ、顔を伏せて立っていた。
髪が長いせいで、下から見ていても、顔の表情は見えない。
と思っていたら、彼女はゆっくり顔を上げ、冷えきった顔で言った。
『うるさい。』
そして、横を向き周りの人を押し退けて教室を出た。
一方、教室のクラスメイトは口をあけてフリーズ中。
30秒後、我に返ったように皆がざわつき始める。
俺も、その中の一人。
びっくりした…。
あんな美少女の口から、あんな言葉が出てくるなんて。
彼女、どうしたんだ?
何を怒ったのか、隣で会話をよく聞いていた僕ですら分からない。
クラスメイトから囲まれ、普通に話をかけられていただけなのに…。
クラスメイトの皆も、僕が思ったのと同じようなことを周りの人に話している。
“ガラガラガラ”
前方のドアが開き、先生が入って来たと同時に鐘がなった。
号令が終わると、先生はこっちを向いて言う。
「八神さんは?」
「教室からさっき出ていったままです。」
と僕は答えた。
すると教師は、大きなため息をつき
「大森くん、ちょっと探してきてくれない?」
「はい、分かりました。」
僕は席を立ち、教室から出て、廊下を左に歩きだす。
なんとなく予想はついている。
廊下を真っ直ぐ進んで、途中にある階段を上って、一番上の階を目指す。
まぁ、たったの一階上るだけだけど。
一番上の階に上り、目の前にあるドアのドアノブに手を掛ける。
ドアを引くと、古びた音がした。
“ギギィ……ギ…”
ドアを開けると、目の前には、広い風景。
屋上だ。
予想的中…。
目の前の屋上の柵には、こっちを背にして八神さんが立っている
僕は八神さんに歩み寄って声をかけようとする。
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