出会いの季節、春。

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「八神さ―」 『あ゛~~!』 ぎょえっ!? 歩み寄る足がピタッと止まる。 た…、確か今、八神さんから叫び声が聞こえたような… 『なんなのよ!皆、私の周りにきてペチャクチャ…、鳥みたいにうるさいの…』 八神さんが振り返り、目が合った。 「何してんの?」 『ストレス発散よ』 彼女は柵に寄りかかって、平然とした顔で言った。 『あなたはどうしてここに居るの?』 そして彼女は腕を組み、偉そうな口調で言った。 「先生から八神さんを呼んでくるように―」 『嫌!』 と即答された…。 嫌と言われても、困る…。 『あんな窮屈な教室には、戻りたくないわ!息が詰まる。』 なんか今気付いたんだけど、僕のイメージとは大分かけ離れている性格だな…。 「そう言われても…」 『嫌なものは嫌なの!』 しかも、わがままだし! 少しくらい、美人だからって調子のってんのか!? でも、ここで取り乱す分けにはいかない。 冷静に、落ち着け。 と僕は、彼女に再び歩み寄りながら言う 「ほら、皆心配してるから戻ろう。」 八神の目の前で止まり、手を差し出す。 『嫌よ』 八神は手を取らず、顔をそっぽに向ける。 頑固だなぁ!僕のイライラは、もう頭のてっぺんまで達している 『だって、皆は私の表面しか見てないもの。あなただって、そうでしょ?』 本当のことを言われて、胸がドキッとする。 『容姿とか、頭とか、お嬢様とか、近寄ってくる人は皆、それ目当て。』 まぁ、確かに彼女の容姿は完璧で、男が黙っているわけがないし、頭の良さも今朝の入学式で、新入生挨拶の代表に選ばれたくらいだからいいんだろ…ん? お嬢様? 今、八神がそう言ったように聞こえたのは、僕の聞き間違いか? 「今、自分のこと、お嬢様って言った?」 『えぇ。言ったわ』 僕の頭が混乱しているこんなときでも、八神の表情は全く変わらない。 「お嬢様って…、八神が?」 確かに、お嬢様に見えなくはないけれど…、信じられない。 『そうよ。あなた知らないの?私の父と母。』 僕は、顔を縦に振った。 『私のお母様は、大女優の八神・結子。お父様は、有名な家電製品やレストランなど、いくつもの企業を経営する八神・成幸(なりゆき)。』
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