1人が本棚に入れています
本棚に追加
「八神さ―」
『あ゛~~!』
ぎょえっ!?
歩み寄る足がピタッと止まる。
た…、確か今、八神さんから叫び声が聞こえたような…
『なんなのよ!皆、私の周りにきてペチャクチャ…、鳥みたいにうるさいの…』
八神さんが振り返り、目が合った。
「何してんの?」
『ストレス発散よ』
彼女は柵に寄りかかって、平然とした顔で言った。
『あなたはどうしてここに居るの?』
そして彼女は腕を組み、偉そうな口調で言った。
「先生から八神さんを呼んでくるように―」
『嫌!』
と即答された…。
嫌と言われても、困る…。
『あんな窮屈な教室には、戻りたくないわ!息が詰まる。』
なんか今気付いたんだけど、僕のイメージとは大分かけ離れている性格だな…。
「そう言われても…」
『嫌なものは嫌なの!』
しかも、わがままだし!
少しくらい、美人だからって調子のってんのか!?
でも、ここで取り乱す分けにはいかない。
冷静に、落ち着け。
と僕は、彼女に再び歩み寄りながら言う
「ほら、皆心配してるから戻ろう。」
八神の目の前で止まり、手を差し出す。
『嫌よ』
八神は手を取らず、顔をそっぽに向ける。
頑固だなぁ!僕のイライラは、もう頭のてっぺんまで達している
『だって、皆は私の表面しか見てないもの。あなただって、そうでしょ?』
本当のことを言われて、胸がドキッとする。
『容姿とか、頭とか、お嬢様とか、近寄ってくる人は皆、それ目当て。』
まぁ、確かに彼女の容姿は完璧で、男が黙っているわけがないし、頭の良さも今朝の入学式で、新入生挨拶の代表に選ばれたくらいだからいいんだろ…ん?
お嬢様?
今、八神がそう言ったように聞こえたのは、僕の聞き間違いか?
「今、自分のこと、お嬢様って言った?」
『えぇ。言ったわ』
僕の頭が混乱しているこんなときでも、八神の表情は全く変わらない。
「お嬢様って…、八神が?」
確かに、お嬢様に見えなくはないけれど…、信じられない。
『そうよ。あなた知らないの?私の父と母。』
僕は、顔を縦に振った。
『私のお母様は、大女優の八神・結子。お父様は、有名な家電製品やレストランなど、いくつもの企業を経営する八神・成幸(なりゆき)。』
最初のコメントを投稿しよう!