茨の森にてはじめまして。

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「‥‥こ、ここは?」 そう呟いても返事はない。 おかしい。絶対におかしい。だってさっきまで自分は放課後の教室にいたはずだ。なのに何故自分は一人で茨に囲まれた薄暗い森に突っ立っているのだろうか。そうか、これは夢なのか。 でも、夢だと思いたいのに感覚がリアル過ぎる。目覚めた瞬間に見えた見慣れぬ光景に慌てて上体を起こした時に近くの茨の刺が頬を掠めた。その痛みをジンジンと感じる。 試しに頬を抓ってみると見事に痛かった。これは夢ではないのか。しかし、あまりにも現実離れしている。 何よりおかしいのが、こんな見慣れない場所をどこか懐かしく思う自分だ。初めて見る場所のはずなのに魂が覚えているような、そんな感覚。いや、上手く言えないが。 とにかく、いつまでもこんなところで座っているわけにはいかない。制服が汚れるし、早く帰りたい。‥帰れるのなら。 立ち上がると高くなった視界で再び辺りを見渡してみる。見渡す限りの茨と暗い森。人の気配は全くない。
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