霊界混線

1/1
前へ
/121ページ
次へ

霊界混線

友人と電話をしていた時の話。 小説の登場人物の衣装や小物、ついでにオンラインゲームのスキル構成の相談。そんな話で盛り上がっていた時、電話の向こうで別の声がした 「おにーちゃんっ!」 微かに、怒りをはらんだかのような声。 そういえばコイツは妹がいたんだっけ。 頭の中で納得する。 「おにーちゃん!ねぇおにーちゃん聞いてるの!?」 私に兄弟はいない。しかしその声色は、兄弟のいる友人らの元でよく聞くものと同じ。風呂に入れ、物を返せと兄や姉を急かすような雰囲気である。 友人はそんな言葉など聞こえていないかのように電話を続ける。 下の妹弟を鬱陶しがり無視する、兄や姉という生き物にはよくあることだ。 「おにーちゃん!ねぇおにーちゃんってば!」 しばらくして さすがに私も、呼び続ける妹が不憫になった。 「なぁ、妹さんいいの?」 『何が?』 「さっきからずっと呼んでるじゃん。用事あるんじゃない?」 一瞬の沈黙 『さっきって、何時だ?』 コイツは何をいってるんだ?だってさっきから…。 そこまで道筋をたどってから私は違和感に気付く。 声は電話を初めてすぐ聞こえ始めていたはずだ。しかしすでに一時間近い時間が経っている。 つまり30分以上の間、声はし続けていたことになる。 そこで私は ああコイツは、私などより余程霊感とかいわれるものが敏感にできていたのだったと思い出した。 『妹はとっくに寝た』 友人は続ける 『混線かもしらんが、30分以上だろ?その可能性は少ないな』 どれだけ思い返してもその声は、ずっと同じフレーズを繰り返していた。そんな混線、それはそれで怖い。 「…妹さんの年齢は?」 『お前が聞いたのはどんな年齢の声だ?』 「小3か…小4」 『残念、妹は高校生だ。今その声は?』 「もう聞こえない」 『ありがたいね』 いつ消えたのだろう。ずっとBGMのように聞こえていた声だというのに、私は消えたことにも気づかなかった。 「お前にゃ聞こえなかったの?」 『聞こえなかったね。多分種類が違うんだよ』 友人はケラケラと笑いながら、例えレベルが上だとしてもシーフとビショップじゃあ、得意な敵は違うだろ?と、共通のオンラインゲームの互いの職を例にして見せた。 電話から始まる怪談は数多い。きっと使いやすいのだろうと思う。 だから私は、知らない番号には極力出ないことにして居る。 生きていようが死んでいようが、トラブルの元に変わりはないのだから。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

509人が本棚に入れています
本棚に追加