アメジストの夢

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翌日、ぼんやりとその友人と食堂で話し込んでいる時だった。 昨日見た夢に、お前が出てきて…と、どこに挟み込もうか図っていると、友人がこう切り出した。 「探してる本があるの」 彼女がいうには、ごく個人的な趣味である歴史の事柄を調べているのだそうだ。 しかしこれが資料がない。それで困ってるのだという。 「だから私、アメジストに頼んでみたの」 少しばかり霊感のある彼女は、オカルトに頼ってみたのだという。 「でも私、夢とか見ないから、夢のお告げじゃ困りますって。起きてる私に伝わるようにお願いしますって、頼んでみたの」 思わず怖い顔をしたらしい。友人が慌てたように聞き返してきたので、私はできる限り忠実に思いだし思い出し、彼女に夢の内容を伝えた。 「…その本、あるかな」 あったら、信じることにしよう。 意見がまとまり、図書館に向かう。入り慣れないジャンルの棚の前に立ち、夢を思い出す。 「棚は?」 分からない。でもお前が少し背伸びしてたから、上から2~3段目。 そして棚の、真ん中より右側から本をとってた。 厚さは…400ページくらい。白い布地の表紙、カバーはない。 小声で夢を辿る。 あやふやな記憶に悪戦苦闘しつつ、しばらくすると一冊の、青い文字で背表紙が描かれた本が手のなかにあった。 「さて、アタリかな」 友人と顔を付き合わせ、夢の中で開かれていたページを探す。 見たこともない文献の名前、どちらかといえば郷土史に近い文献の中に 「あった…」 完全な確証ではないらしかったが、友人が探していた情報にかなり近い文面があったのだ。 すごいなぁ、アメジスト 思わず呟くと彼女は 「こんなにすぐ叶うなんて困ったな、お金ないのに」 と答えた。 お金がない?とはなんだと問うと 「アメジストにお願いしたとき言ったの 『もし叶えてくれたら、ブレスレットを新しく組み直してあげます』 って」 友人が黄色のシトリンと水晶、そして一粒のアメジストのブレスレットを眺める。 言わねばなるまい、アメジストはどうやら『青い石を使ってくれ』と要求しているようだが、という話を なんだか創作の話のようだが、本当にあった不思議な話。 この後、私と友人は 『青い石って一体何なんだよ』 と散々議論することとなった。 なお、友人一番のお気に入りのアメジストは…たった300円の働き者である。
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