教習所の怪

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教習所に通っていた時の話。 次の教習までに時間があったので、私は自習部屋で寝ることにした。 そこで夢を見た。 教習所の車が峠を走る。ガードレールの向こうは完全な闇で、坂道以外は何も見えない。 車の教習ナンバーは23番。はて、何番まであったかな、と私は斜め上から車を眺めている。 と、真横をミラーが通りすぎた。ちらりと視線を向けると、ミラーに写り混む車に女がいた。 白い着物の死装束の女であった。 はっとして車を見るが、そんなものは居ない。 車は走り続け、次のミラーが来る。 やはり、居る。 女が車にしがみついている。 次のミラー、また次のミラー、見えるたびに女が写る。コーティング用のマニキュアが塗られた爪が彼女が割合と若く最近の女性であると主張していた。 このあたりで私はミラーの中の映像が段々と近づいて来ていることに気がついく。そしてこれが夢であることにも。 次のミラーが近付く。これ以上鏡を見続けるのは不味い。 夢の中で目を閉じる。 これは夢だと言い聞かせる。最後に『起きろっ!』と吠えた。 静寂が波紋になり壁にぶつかる。目を擦りながら顔をあげ、携帯を開き時間を見る。起きられるものだ。 その後着々と教習をこなし、数日経った頃だろうか。 『教習車に一台、事故車があるんだって』 そんな会話を漏れ聞いた。23番だろうか 『うそだぁ!』 『嘘じゃないよ!だって…』 会話に耳を立てるが、それが何番の車かは、分からないようだった。 生徒がぶつける前提なので中古車もある、という話は教習の中でされたが。 教習の中で、たまに変な車を見かけた。路上に出るとき、トランクが開いている給油口が開いている。ミラーがおかしい。教習所なのだ、出発前に点検するはずなのに。 それが何番の車か、現場を見ても私は確認はしなかった。23番だったらどうする。確信してしまったら、自分が乗れと言われた時、運転できる気がしない。 また有り難いことに、卒業までに23番に乗ることは無かった。嫌われたのかもしれない 新しいものを買うと 『そんなの中古でいいじゃん』 と言う人がいる。 そうではない 現に本やゲームは中古でいい。服だって、人から貰うものは構わない。 問題は誰が使ったか分からないものが嫌なのだ。小さなものは捨てればいいから構わないが、身に付けるものや、まして捨てられない車なんて 安物買いの銭失いなら笑い話だが …安物買いで命を失うなうのはまっぴらである
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