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どっちにしても、詩織ちゃんが来るのはうれしいような切ないような...。私の顔が暗い表情をしていたのかもしれない。いきなり詩織ちゃんが顔を覗き込んできた。驚いて、いすから立ち上がる。いすが思いっきり倒れて、注目を浴びてしまった。
「何してるの?」とみな友達は爆笑した。たった一人、詩織ちゃんを除いて。あまりの恥ずかしさにそこにいる勇気はなく、すぐにトイレへと逃げ込んだ。
トイレの中にある蛇口をひねり、水を流す。水は冷たくて気持ちがよかった。
「大丈夫か?」そう言って背中をぽんと叩かれた。そこには笑顔の詩織ちゃんがいた。すぐに目を逸らす。
「ああ、大丈夫。ちょっと驚いただけだよ」目を見られたくなかった。
「何かあったら何でも話しなよ」そう言って廊下を横切った。
何かあったらか。昔、そんなこと言っていた先生がいたなぁ。でも、結局力にはなってはくれなくて、1人で負けんぞって現実と向き合っていた。周りの力が必要だと気づいたのは、一年生のときだ。それまでは、周りの力は必要ないって大人気ないことを思っていた。さあ、友達のところに帰ろうか。
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