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教室に戻った後、すぐ解散になった。
俺はどうせ帰ってもやることがないので、本当になんとなく中庭に行った。
別に、さっきのやつが気になったからではない、なんて自分に無意識に言い訳しながら。
桜の木の下にはまだあの女がいた。
桜を見上げているみたいだった。
そのとき、俺は『ごちゃごちゃ考えるくらいだったら話し掛けちまえ』という血迷った考えに至ってしまった。
「何やってんだ?」
そいつはゆっくり振り返って俺を見た。
「…………」
そいつはただ真っ直ぐ俺を見ているだけで何も言わない。
「無視?」
そいつは何故かだんだん有り得ないものを見ているように目を見開いていった。
そして、戸惑ったように口を開いた。
「……見えるの?」
「何が?」
「……そっか。
見えるんだね。」
嬉しそうに笑った。
だけど、やっぱりその笑顔はどこか儚く見えた。
切なさや寂しさそういった感情も含まれている気がしたが、俺にはわからなかった。
「私、幽霊なの。」
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