桜の木

9/10
前へ
/32ページ
次へ
「…………………。 えっ?えっ?ななななななんでっ!?」 「はいはーい。とりあえず、落ち着いて。深呼吸だよ。」 「あ、うん。 ………ってこの状況でどうやって落ち着いけって言うんだよ!!」 「あははっ、面白いねあんた。」 なんかこいつの能天気な笑顔を見てたら、混乱している自分が馬鹿らしく思えてきた。 「で?何やってんの?」 「あれ?なんで急に冷静になってるの?」 「馬鹿らしくなってきた。」 「………へぇー。本当に面白いねあんた。 やることがないから、桜を見てたの。」 「暇なんだ?」 「幽霊だからね。誰とも話せないし、何も掴めないもん。」 そう言って、笑った。 俺には、その顔がなんだか寂しそうに見えた。 そんな顔を見たら、胸がチクリと痛んだ。 「俺で良かったら、話し相手くらいにはなってやる。」 「えっ?いいの?」 「ああ。」 自然とそんな言葉が俺の口から出ていた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加