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「どうして?」
憂鬱げに、少女は呟いた。
学生服を着て、黒髪を肩まで伸ばした大人しい印象の少女だ。
場所は学校の図書室、その一番奥の窓際に面した場所での話だった。
視線を読んでいた本から向かいにいる人物に傾ける。
少女はこの言葉を呟くのと共に、なんとも言えない不快感を感じたようだ。
向かいの人物は若干引きつったような笑みを浮かべた。彼女とは同じクラスの少女のようである。
普段図書室に寄る人もいないのを知っているためか、彼女に声を潜める様子はない。
しかしながら、相手の少女は気まずそうにひそひそ声で話している。
「だから、ごめんね?わたしは、あのとき、マホリのようには出来なかったの。わかるでしょ?」
マホリと呼ばれた黒髪の少女は、その言葉に更に気分が悪くなるのを感じた。
「どうして?」
真顔のまま、マホリはさっきと同じ言葉を紡ぐ。
「ミナミさんがなんで言い返さなかったのかが、わたしには不思議だった。端から見ても、貴女が傷ついているのは明白だったのに。」
マホリの向かいで座っていたミナミという少女は曖昧な笑顔を向けたままだった。
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