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「あ、あの……」
図書館に入るなり、俺は魅入られたように、カウンターにふらふら。
声をかけたきり、その子の瞳を見つめて何もいえなくなっちゃった。心臓のドキドキがまるで、耳のすぐ隣で鳴っているかのようだ。
短い時間だっただろうけど、沈黙。
そして、彼女が口を開いたのだ。
「何か、ご用ですか?」
優しさの中に強さを感じる美しい声だった。
俺は慌てて財布を取り出すと、中身をごそごそ。取り出した身分証と一緒に夢見心地でこう答えたのだ。
「あの! 図書カードを作りたいんです!」
彼女の手が俺の身分証を受け取り、その夢のような時間は、ものの5分くらいであっさり完了した。
交わした言葉はそれだけ。
それ以上は何もなし。
劇的な出会い?
そんなもの、あるわけないだろ?
夢見てんじゃねえよ……。
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