アタシの血を吸いなさい

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 図書館の中は、適度以上に効いた冷房と、まばらな人影。リニューアル後の清潔感はいまだ健在。  あれ、いつもより人が少ねえな……。  ふと思い出したのは、近所で行われる花火大会のこと。小学校、中学校のときの同級生連中からそういやメールが入っていたな。  それが確か、今日。  みんな祭り気分に浮かれて、読書どころじゃないってことなのだろう。  読書が好きな人ならわかるだろうけど、周りが浮かれている中で、一人、本を読むのは実に寂しい。  そんなときは、本なんか読んでいないで、騒ぎに飛び込むほうが賢明だ。孤独に耐える修行なんかしてもしょうがない。  カウンターをのぞき見ると、あれれ、彼女もいないでやんの……。  がっくりと肩を落とした俺は、気持ちを切り替えて文庫小説のコーナーをうろうろ。元気になれそうな小説はっと……。派手なやつがいいよな……。
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