157人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく探した後、俺は好きなアメリカのSF作家の文庫を見つけた。文庫を手に取り、空いている席の一つに座る。
『今日は帰ったほうがいいよ?』
不意に誰かに声をかけられたような気がして、振り向くが誰もいない。
あれ、こんなに館内は冷えているのに、俺ってば、冷や汗かいてる?
その幻聴のあまりなリアル感に、背筋がぞっとしている。
ホントに幻聴か?
周りを二度三度見回しても、誰もいないのだからもちろんそうなる。
……なんなんだよ、一体。
と、溜息をついても一人。突っ込みをいれてくれる友だちもいなけりゃ、あの子もいない。
「アホらし……」
俺は呟いて、文庫のページをめくりだしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!