アタシの血を吸いなさい

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 しばらく探した後、俺は好きなアメリカのSF作家の文庫を見つけた。文庫を手に取り、空いている席の一つに座る。 『今日は帰ったほうがいいよ?』  不意に誰かに声をかけられたような気がして、振り向くが誰もいない。  あれ、こんなに館内は冷えているのに、俺ってば、冷や汗かいてる?  その幻聴のあまりなリアル感に、背筋がぞっとしている。  ホントに幻聴か?  周りを二度三度見回しても、誰もいないのだからもちろんそうなる。  ……なんなんだよ、一体。  と、溜息をついても一人。突っ込みをいれてくれる友だちもいなけりゃ、あの子もいない。 「アホらし……」  俺は呟いて、文庫のページをめくりだしたのだった。
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