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あーあ……きっと私のこと、凄く遊んでる女だと思ってるんだろうなぁ……ちょっとは身体に触れ合ってても実は処女だなんて、思ってもないんだろうな…… だから私もこんな所で、見ず知らずの男の子にヤられてたまるか!
年下とは言え、腕力では敵わないだろうから、女は演技力で勝負。一応、女優の端くれだし……
いざという時に、蹴りあげる位置だけは確認しておく。
だけど彼は私に跨がったまま、全く動こうとはしなかった。
「どうするつもり?これから」
「……いや……わからないんだ……」
私は気づかれないように、小さく安堵した。
アキは東京の熟[こな]れた少年たちとは違う。当然だが。田舎の常識に近いレベルで、十七歳のアキはキスさえ知らなかった。
この時になって、アキは初めて名乗った。学校名まで明かして身の証明を立て、ベッドの上に座り直して言った。
「お姉さんとキスしたい」
驚きはしなかった。その時はもう、何となく、アキを可愛いと思っていた。涼しいツリ目で尖ったフリをしていても、笑うとすぐに目尻が垂れて十七歳の顔しか出来なくなってしまう彼を。
「仕方ないな」と心で呟き、軽く唇を重ねた。
唇を噛みながら、アキは照れたように笑い、私の肩に手をかけた。
「……も一回。今度は『アキ好きよ』も付けて」
「調子に乗らないで」
向けた背中で「1回も2回も同じやろ……」と文句を言いかけていたので、振り返ってちゃんとしたキスでその口を塞いだ。声には出さないで、お望みの言葉も添えておいた。
『好きよ、アキ……』
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