ルシファーⅡ

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 いやいや晶君、それは思いっきり矛盾している気がするぞ? しかし――何故かこの男にはそんな言葉がしっくりくるのが不思議なところだ。  ま、こいつはこいつなりに気をつかっている……という事か。指摘が鋭かったせいか、キースもバツが悪い笑顔を浮かべているが……。 「で? 一体何の用だ?」  晶君の言葉で落ち着きを取り戻した私は本題へと入る。この男が何の意味もなく私の前に現れるなどそうそうないからだ。  しかし―― 「用? 用なんてないさ。ただお隣さん同士、一緒に帰ろうと思っただけだよ」  ……ふん。白々しいな。  私は一度両肩をヒョイと竦め、 「なら質問を変えよう。何を企んでいる?」  ――途端。キースから何時ものニコニコポーカーフェースが消え、真顔になる。と言っても、怒気を孕んでいるといった風ではなく、ただ単純に真顔になっただけだ。 「ふ~ん。何でそう思った?」 「質問に質問で返すな。――だが先に答えてやろう。ただの勘だ」  何の根拠もない不出来な答えだが、それでも納得したのかキースは笑顔に戻り。 「そっか。じゃあ僕も素直に答えよう……別に何も企んじゃいない。ただ――どちらかと言えば、あくまでどちらかと言えばだけど……もう企ては終わってる――ってところかな?」 「ふん。肝心なところは何も答えんのだな?」 「タチバナが肝心なところをピンポイントで訊いてこないからだよ。けどまあ安心しなよ、君に仇なすような事ではない。寧ろ協力――ヒントを与えに来たと言ってもいい」  ヒント? 「一体何のだ?」  この言葉に今度はキースが両肩を竦め。 「さーて……それは自分で考えなよ。兎も角、今このタイミングで僕が君に会いに来たってのがヒントさ」  わからんな……いや、コイツは自分が楽しんでいるだけなのだろうが……。 「結局のところ……何にもわかりませんね?」  顎に人差し指を当て、頭に疑問符を浮かべる晶君。  恐らく当事者である私でさえわからないのだ。第三者であろう晶君がそれ以上にワケがわからないのは当然だろう。 「ま、もう今日のところは帰らないかい? 答え合わせは次回って事でさ」  私は「フゥ」と大き目の溜息を一つ入れる。 「そうだな。これ以上はヒントも引っ張り出せんだろうし。帰るとしよう」
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