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「ん~……何だか良くわかりませんが。万事オッケーみたいですね?」
晶君も笑顔を零す。
まあ……これで良かったのだろう。
「さて、一足先にオレ様は地獄に戻るとしよう」
「行くのか?」
「ああ。アストラル体を飛ばすだけでも多少なりと力を使うからな。無駄には出来ん」
「そうか……」
私が受け答えをしていると、ルシファーが晶君を見下ろす。
「小娘。お前の漫画――期待しているぞ」
「任せておいて下さい! …………多分」
……オイ。
胸の前で両の拳を握ったわりには不安になる返答だな。
「フッ。ではさらばだ」
私がそんな事を考えていると、ルシファーがその場で煙の様に消え去る。まあ、アストラル体である。飛び去るよりかはそちらの方が自然か。
「良し。では我々も帰るか」
「はい!」
晶君から確認を取り、私達は控え室を後にした。
控え室を出て、魔道裁判所の出入り口に差し掛かった時だ。
まるで私達が来るのを待っていたかのように、一人の男が道に立ち塞がる。
「何だ……来ていたのか?」
私の問い掛けに――
「まあね。僕もこの裁判に多少なりと係わっているからさ。久しぶりに傍聴させてもらったよ」
――キースが答えた。
私は晶君の背にある勝利の剣に一度視線を送る。
――なるほど。そういう事か。
私は視線を戻し、自嘲染みた笑みを浮かべ。
「これは情けないところを見られたな」
「情けないところ? 何の事だい?」
お前もそれを言うか……。
「決まっているだろう。敗訴の事だ」
「ああ。それか」
キースは顎のラインに右手の親指と人差し指を揃える。
「それだったら別に情けないって事はないんじゃないかな?」
本当にルシファーと同じ様な事を言うな……。
「何故そう思う?」
「だってホラ、僕は君が負けているところなんてしょっちゅう見てるからさ。つい先日だって僕に負けたばかりだろ?」
言ってカラカラと笑い出すキース。
……そういう事か。ルシファーとは全然違うな。怒りにも似た感情が込み上げてくるぞ!
私が右手の拳をプルプルと震わせていると。
「キースさんてナンだカンだ言って、性格悪いですけど優しいですよね?」
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