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赤く染まったアネットさんの瞳が潤んでいた。彼女も不安だったはずだ。
1000年と16年。俺がここを訪れるまでの間、彼女にはどれ程長い時間に感じただろうか。
「しかし、それに反して自分でもどうしようもはい邪悪な心が目を覚ましてしまう。魔王様は、魔界と永遠なる地球に暮らす全ての人々を救う使命があるのです。その指輪を手に取り、その使命を果たして下さい」
体の奥から感じる反応はまだ消えない。依然として俺の体は、指輪を拒み続けている。
「御理解頂けたでしょうか。魔王様には、指輪を身につける以外の選択はございません」
「なるほど。俺にこの指輪を着けさせるのが、あんたの役目ってわけか。その為に俺を拉致してこんな場所に連れ込んだってわけか」
「どう取るかは、魔王様の自由ですが、この指輪を手にしなければ、地球にも魔界にもいい事はありません。分かって下さい。あなたがその指輪をはめれば、ひとまずは地球と魔界、2つの世界の人々が救われるのです」
ひとまずはか。一筋縄ではいかないわけか。
まあ、仕方ないのか。
俺は深く何度も深呼吸をして、祭壇に奉られる黒い指輪に手を伸ばした。
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