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翌日、約束通り悪魔が塔の最上階に窓から入ると、少女は確かにそこにいた。
しかし、床より浮き上がり、祈るような体勢で止まっていた。
生き生きとした表情も、仕草もなく、眠るように。
悪魔が彼女と出会った昨日のままで、何一つ変わっていないはずなのに。
それなのに。
「約束通り、来たよ? ねえ、お話ししよう?」
いくら話しかけても彼女が口を開くことも、目をあけることもない。
「ねえ。」
少女の元に飛んでいき、名前を呼ぼうとして、悪魔は気づく。
彼女の名前を自分は知らない。
呼吸はしているし、肌も温かいのに、彼女は指一本すら動かさない。
「目を開けて。ほら、君にもらったリボン、ちゃんとつけてきたんだ。」
昨日彼女がそうしたように、悪魔も手を少女の頬に添えるが、一向に目覚める気配はない。
瞳も、口も堅く閉じられたまま。
「起きて……。」
少年の声は届かない。
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