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何時間そこにいたのだろうか、太陽はその位置をだいぶ変えていた。
窓から見える風景を眺めていたときに、ふと思い出す。
昨日、彼女は「さみしい」と言ってたではないか、と。
確かに殺風景な石造りのこの塔の最上階。
窓から見えるのだって、森と遠くの街だけ。
「ちょっと待っててね」
少女にそう言うと、悪魔はそこから飛び立ち、1時間ほどで戻ってきた。
両手に抱えきれるだけの花々を持って。
「眠る君がさみしくないように。目覚めた君がさみしくないように。」
悪魔は願いをこめて置いていく。
「早く目覚めて、ここはさみしくないよ」
約束通り、毎日、毎日、悪魔は少女に会いに来て、花を届ける。
少しの魔力をこめて、枯れない花を。
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