また、いつか

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「君は、何で泣いていたの?」 落ち着いてきた悪魔がそう少女に問いかけると、彼女は少し困ったような、それでいて悲しそうな顔をした。 「今日が、最後だから。」 「最後?」 少女はうなづく。 「明日からは、塔に入らなければいけないんだって。国のみんなのために。だから今日は、できる限り外を満喫しようと思ったんだけど。……さみしくなっちゃって」 悪魔が後ろを振り返ると、石造りの塔が高くそびえていた。 国の外れにある塔に、誰が遊びに来るというのだろうか。 地上からも空からも離れているそこは、まるで切り離された牢獄のようで、余計に彼女を寂しくさせるのだと言う。
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