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「梨音! おい梨音!! しっかりしろこの馬鹿!!!」
梨音の頭を触ると、ヌルリと生暖かい感触。
手を見れば、真っ赤に染まっていた。
「っ 裕也! 救急車だ! 救急車を呼べ!!」
いつも冷静沈着の筈の裕也に指示を飛ばすが、反応が返って来ない。
焦りからその事に苛立ちを覚え、裕也を見ると、そこにはただ、呆然と立ち尽くす奴が居た。
よく見れば、他の面子も、一体何が起こったのか理解できていないかの様に、固まっている。
チッ、使い物になんねぇ!
殴った筈の牙は、梨音を見て震えていた。
牙「ギ、ン………? ギン、なの………?
ど……して………どうして、こんな…………っ違う! 違う違う!
そうじゃない! 俺が傷つけたかったのはコイツじゃないんだ!!
傷つけたくなんか、なかったのに…………っ!!!」
顔を歪め、頭を掻き乱し、錯乱する牙。
しかし、今はそんな事をしている場合ではない。
梨音を抱えていて身動きが取れない今、近くに居るのは牙だけ。
なんとか正気に戻さなければ。
「おい牙! いい加減目を覚ましやがれ!!
このままだとコイツが死んじまう!
お前、それでもいいのかっ!?」
牙「っつ!」
俺の呼び掛けになんとか反応し、肩をピクリと震わせる。
青ざめていた顔が少しはマシになり、漸く俺と焦点が合った。
「他の奴らは使い物になんねぇ!
お前、救急車呼べ!!」
牙「う、うん!」
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