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急いで携帯でコールする牙。 梨「んっ………」 「! 梨音!?」 そこで腕の中の梨音が反応した。 苦しそうに顔を歪め、薄く瞳を開ける。 そこに見えたのは、銀と碧のオッドアイ。 どうやら、殴られた時にコンタクトが片方落ちた様だった。 「大丈夫か!? おいっ反応しろ梨音!!」 梨「っつつ………そう耳元で叫ばなくても、聞こえてるよ………」 「っ、馬鹿! なんで俺を庇ったりなんかした!?」 俺は苦しくて、どうしようもなくて、梨音に問い詰める。 痛みで眉を寄せた梨音は、困った様に苦笑いした。 梨「ははっ……知らねぇ、よ………。 勝手に、身体動いてたん、だから………しゃーねー、だろ……………?」 切れ切れに言葉を紡ぐ梨音を見て、そこでハッとした。 これは今聞くべき事じゃなかった。 梨音は今怪我していて、安静じゃなきゃいけないのに! なにやってんだ! 俺!! 「クソッ……! 悪ぃ、もう喋んなくていい。 ……本当、馬鹿だなぁ………お前は」 優しく髪を撫で、震えてしまいそうな声を、必死に隠す。 今、梨音を不安にさせるなんて出来ない。 梨「ん、だよ………せっ、かく、助けて、やったのに、さ………」 段々と呼吸が浅くなり、喋ることも辛いはずなのに、梨音は言葉を紡ぎ続ける。 「それだよ。 俺なんて、助ける必要はなかった。 俺は、俺が傷つくことより、お前が傷つくことの方が………ずっと、痛くて、恐くて……悲しいんだ」
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