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梨「そう、か………」
梨音がぼんやりと呟く。
何処か物思いに耽っているようだった。
梨「……でも、それ、は……俺も、同じ、だから………」
「……ぇ?」
思いも寄らない言葉に、思わず俺は聞き返す。
梨「俺、だって………お前が、傷、つけば………辛い」
「……馬鹿………」
想いが同じだったのが嬉しくて、でも、今の状況が状況なだけに、それしか言えなかった。
そんな俺に、梨音は口元だけに笑みを作り、知ってる、と呟いた。
少し遠くから、救急車のサイレンの音が聞こえる。
梨「クスッ……もうすぐ、お迎え、だね………?」
「縁起の悪い言い方すんじゃねぇよ」
笑う梨音に、俺も笑いかける。
梨「死ぬ、つも、りは、無いけど………ちょっと、疲れ、ちゃったや…………。
少しだけ、眠るね………?」
「ああ、ゆっくり休め。
お前が起きるまで、ずっと傍に居るから……。
……俺が、お前の傍に。
だから、お前は安心していればいい」
梨「あり、がと………」
梨音はゆっくり目を閉じ、すぐに意識を手放して、穏やかな呼吸を繰り返していた。
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