15

11/16
前へ
/285ページ
次へ
梨「そう、か………」 梨音がぼんやりと呟く。 何処か物思いに耽っているようだった。 梨「……でも、それ、は……俺も、同じ、だから………」 「……ぇ?」 思いも寄らない言葉に、思わず俺は聞き返す。 梨「俺、だって………お前が、傷、つけば………辛い」 「……馬鹿………」 想いが同じだったのが嬉しくて、でも、今の状況が状況なだけに、それしか言えなかった。 そんな俺に、梨音は口元だけに笑みを作り、知ってる、と呟いた。 少し遠くから、救急車のサイレンの音が聞こえる。 梨「クスッ……もうすぐ、お迎え、だね………?」 「縁起の悪い言い方すんじゃねぇよ」 笑う梨音に、俺も笑いかける。 梨「死ぬ、つも、りは、無いけど………ちょっと、疲れ、ちゃったや…………。 少しだけ、眠るね………?」 「ああ、ゆっくり休め。 お前が起きるまで、ずっと傍に居るから……。 ……俺が、お前の傍に。 だから、お前は安心していればいい」 梨「あり、がと………」 梨音はゆっくり目を閉じ、すぐに意識を手放して、穏やかな呼吸を繰り返していた。  
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

255人が本棚に入れています
本棚に追加