255人が本棚に入れています
本棚に追加
話しの内容は、どちらも俺を探している様だったが、急に不穏な空気が流れたかと思うと、喧嘩が始まった。
周囲にあった複数の気配も飛び出して行き、修羅の面々に向かって行く。
喰狼の幹部だけならなんとか出来ただろうが、そこに下っ端も加わり、幹部しかこの場に居ない修羅が圧倒的に不利に追い込まれる。
いくら気配を探っても、近くに修羅の下っ端の気配はなく、助けを呼べる状況ではなかった。
俺は出て行きたい気持ちを抑え、その喧嘩を、あの人を見守る。
ふいに、龍斗に攻撃していた牙が戦線離脱し、近くにあった何かを拾った。
―― え……?
手にした何か――鉄パイプを持ったまま、牙は龍斗の後ろへと近づく。
―― うそ、でしょ……?
―― ちょっと待ってよ………。
―― ダメ! それは!!
「 龍斗! 」
鉄パイプは、スローモーションで龍斗に振り下ろされていく。
俺の体は勝手に走り出し……
……龍斗の前に滑り込んだ。
突然の事に、体を硬直させていた龍斗の瞳が驚愕に染まり、俺を映す。
その直後
鈍い音が体を駆け巡り、衝撃に耐え切れず、膝から崩れ落ちた。
『 梨音! 』
愛しい声に名前を呼ばれ、俺は暖かな温もりに抱き留め包まれる。
ああ なんて幸福なんだろう?
最初のコメントを投稿しよう!