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心が歓喜の声を上げる。
自らが逃げ出した癖に、何を言っているのだと言われるかもしれない。
それでも、この声にもう一度呼ばれ、温もりに触れることができた。
ただそれだけで、この心は震える。
それが例え ――
―― 命の灯(トモシビ)が、消えかけている、この時だとしても……。
直ぐ傍で話し声が聞こえるが、内容が頭に入って来ない。
痛みは既にわからなくなっており、身体に気怠さが回り、意識を闇へと引きずり込もうとする。
姿が見たくて、それらを必死に振り払い、俺は閉じられた瞳を開いた。
「んっ………」
龍「! 梨音!?」
俺の異変に気がついたのか、龍斗が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
ああ、俺は何を恐れていたのか。
確かに俺は龍斗を騙していた。
でも、それを理由に、誰かを嫌ったりする様な人間ではない。
現に、こんな姿になるまで俺を探し回って、俺を悲しみと心配の瞳で見つめているというのに。
それなのに俺は……
……何故信じきれなかった?
こけた頬を見て、俺は目を反らしたかった。
龍「大丈夫か!? おいっ反応しろ梨音!!」
「っつつ………そう耳元で叫ばなくても、聞こえてるよ………」
これ以上心配させたくなくて、無理矢理おどけて見せる。
龍「っ、馬鹿! なんで俺を庇ったりなんかした!?」
そんなの……龍斗だからに、決まってんじゃん………。
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