255人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、その言葉は飲み込んだ。
「ははっ……知らねぇ、よ………。
勝手に、身体動いてたん、だから………しゃーねー、だろ……………?」
だから、また戯けて見せる。
これも嘘じゃない。
事実、あの時の俺は龍斗を助けることしか頭に無かった。
徐々に呂律が回らなくなってきたな……。
呼吸も心なしか、苦しくなってきた。
龍「クソッ……!
悪ぃ、もう喋んなくていい。
……本当、馬鹿だなぁ………お前は」
「ん、だよ………せっ、かく、助けて、やったのに、さ………」
優しく髪を撫でる龍斗は、困ったように笑う。
それに俺も拗ねたように返す。
龍「それだよ。
俺なんて、助ける必要はなかった。
俺は、俺が傷つくことより、お前が傷つくことの方が………ずっと、痛くて、恐くて……悲しいんだ」
「そう、か………」
笑っていて欲しいはずなのに、その笑顔を奪ったのは俺自身、か………。
でも、それは………
「……でも、それ、は……俺も、同じ、だから………」
龍「……ぇ?」
驚いた様に龍斗が声を漏らす。
そんな龍斗に苦笑いをする。
驚く事では無いと思う。
ただ……俺にとっても、お前が大切な存在であるというだけのこと………。
「俺、だって………お前が、傷、つけば………辛い」
龍「……馬鹿………」
すると、龍斗の口元が嬉しそうに緩んだ。
俺も吊られて笑い、知ってる、と呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!