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「何故……?」
気づいたら、俺は口に出していた。
「何故、梨音が……アイツが、愛情を受けられなかったんですか?」
京「……両親は、俺しか愛そうとしなかったんだ。俺がどれだけ促しても。
梨音がお腹に居る時でさえ、何の感情も持っていない様だった」
理事長はキツく手を握り締め、歯を食いしばる。
この人にとっても、凄く悔しかったんだ。
きっと何も出来ない自分に腹が立ったことだろう。
だって、理事長からは、本当に梨音を愛しているんだという事が伝わって来るから。
京「生まれたら生まれたで、世話は使用人に全て任せていた。
それでも一応は如月の人間という事で、英才教育を受けれるだけマシだった。
その理由が、道具とするためじゃなければ、な………」
純「どう、ぐ………」
純が呆然と呟く。
そうか……!
それがアレだったのか………!!
「あの、見合いのこと………ですね?」
京「……そうだ」
理事長が苦々しい顔で、呻くように言う。
きっと今は俺も同じ顔をしているだろう。
京「両親はずっとほったらかしにしていた梨音を、他の家に嫁がせることで………更なる利権を手に入れようとした。
………あの子は、そのためだけに今まで生かされて来たんだ。
そして、そのことはあの子も知っていた………」
牙「そんな!
知っていたのなら何故!?」
知っていたのなら、何故それに従ったのか?
確かに、牙の疑問はもっともなものだ。
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