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月「知っていたからこそ、ですよ」 今まで沈黙を保ってきた瀬戸が、口を開く。 月「知っていたからこそ、あの方はそれに従った………。 それが、唯一自分を必要としてもらえる方法なのだから………」 「そん、な………」 そこに居た者は皆、絶句した。 わかってしまった。 わかりすぎてしまった。 彼女の心が………。 何処まで行っても、何をしても、その人達が自分を産んだ親。 変わらない。  ―― 否   変えられない。 いくら虐げられても、詰られても。 変える事の出来ない事実。 だからこそ、彼等に求めた。 ただ愛を。 決して向けられる事が無いと気づいていたとしても………。 ただ、求めた。 月「今までの梨音様なら、大輔様のお言い付けに従ったでしょう。 しかし………今回ばかりは違いました」 違った? 何が、違ったのだろう? 梨音は如月の頭首に従って、見合いに来たではないか? 月「龍斗様」 静かに、そしてしっかりと、瀬戸は俺を見据える。 月「貴方様です」 「俺……?」 月「そうです。 お相手が貴方様であったからこそ、梨音様はお逃げになられたのです」 ―― 俺だから? わからない。 だって、梨音が逃げたのは自分が女だと知られたくなかったからではないか?
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