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「はぁーぁぁ…」
木陰に座り込み、木の幹にもたれ掛かりながら、本日何度目かの溜息を落とす。
まさか、家もボロボロ、服すらボロな俺の家が…。
「伯爵家とかビックリだわ」
いやもう、ビックリだわ。
それで俺が夜逃げした原因もコレ。
爵位ってのは、相続する時に税金が掛かるらしい。
金額を聞いて目が飛び出るかと思ったから。
俺の十年分位の生活費だったから!
つーか、爵位いらねぇし。
そもそも金もねぇし。
で、旅支度を整えた俺は、さっさと夜逃げしたわけだ。
切れた靴紐を引き抜くと、新しい紐を差し入れ、また深い溜息。
見上げた空は、いつの間にか…どんよりと曇り始めていた。
「さっきまで晴れてたのに…。こりゃ、ひと雨来るかなぁ。降る前に、街まで行けると良いんだけど…」
ズザザザザッ!
呟きつつ、仕上げに紐を結ぶかって所で、すぐ脇から何かが飛び出し、勢い良く地面を滑るように転がった。
間髪入れずに数人の怒声と足音。
あっと言う間に、目の前には張り詰めた空気が漂っていた。
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