押しかけ使い魔

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やべぇ、やべぇ! ホントやばいから! 何がって、魔族のお兄さんが腰から剣を抜いちゃったから! え? 俺? や、一応武器はあるよ? 親父の形見の剣を背中に背負ってるけど…使った事ないから! 俺が毎日握ってたのは、剣じゃなくて畑を耕す鍬だからねッ!? 俺の装備なんて、その剣とじいちゃんの形見の古ぼけた短剣。後はお袋の形見だっていう指輪だけ。 オーケー。 死んだな、俺。 魔族のお兄さんが剣を振るのと俺が一歩後退るのは、ほぼ同時だった。 「うげッ!」 まだ結んでなかった靴紐を踏んでいたらしい。 見事な程無様に尻餅を着いた俺の頭上を、ブンと風を切り剣撃が通り抜ける。 こ…怖ぇぇぇぇ! ブン!て…。 音だけてチビりそうだったわ! ってか、靴紐! すすすすぐに結ばないと! 逃げる最中に転ぶ! 慌てて頭を下げて靴紐に手を伸ばすと、またも頭上でブンと風を切る不吉な音が…。 チラと上目に視線を向けると、さっきまで俺の頭があった場所を蹴りつけようとした魔族のお兄さんの足が…今、正に空振りしたトコだった。 ちょッ、まっ! 俺、通りすがりの一般人なのに! 何で問答無用で殺され掛かってるんだ? おかしいだろコレ! 何て言えません。 歯がガタガタしてしゃべれないし! ととと取り敢えず靴紐…! いや腰が抜けて立てないから、何か別のコトして自分を誤魔化そうとしてるワケじゃないんだからねッ!?
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