悪夢の時代

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ぽつり、ぽつり 窓に雨粒の当たる音が部屋を一杯に満たした。 私はこの音が好きだ。 当たり前のように身近にある音だけれど その『身近』になにか感じるところがある。 とりあえず夜に雨が降る日はこうして温かいインスタントコーヒーをマグカップに淹れて窓際でそれを観察するのが私の日課。 今日もワクワクした気分で窓際の特等席に座り外を眺め―― 「え…………」 驚愕した。 普段雨というのは夜になると窓越しから粒を見るのはなかなか難しい。 しかし、今降っている雨は普通にはない特徴でこの夜の暗さでも見えている。 そう ――紅い 雨粒がまるで血のように紅い。 突然すぎる出来事が私には信じられず、なんども、なんども目を擦った。 しかし目の前のそれは変わらない。 これは『現実』なのだと悟る。 ダメだ、と感じつつも窓を開け、腕を外に出してみる。 ぽつ、ぽつと腕に当たった粒を見ようと腕を引いた刹那 「っあぁ!!」 痛みが腕をかけ脳を伝い全身に響き渡る。 痛い そんなものじゃ済ませられない激痛。 そのまま、視界は暗転。 私は痛みで気を失った。 そう 2012年6月28日午後8時47分。 世界中が『紅い雨』に見舞われ そこから所謂今に言われる『悪夢の時代』が始まったのだ。
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