第1部

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 何か罵声を浴びせられるかもと、ぐるぐる言葉を探していたその時。 「……もぉー。何すんのよぉ……」  けらけら大笑いする彼女。その顔を見て、ホッとしたら言葉が出てきた。 「ごめん……。こんなつもりじゃなかったんだけど」  彼女を立ち上がらせつつ、岸へ向かう。  荷物を置いておいた石に彼女を座らせ、タオルで髪の毛を拭いてあげた。  ……正直、どんな態度をとったらいいか、わからなくて。  困っているのを見透かされないように、やけにお世話焼きな俺になってたと…今ならわかる。  自分の姿を一通り見て納得したのか、彼女は俺の眼を見た。
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