11人が本棚に入れています
本棚に追加
アレストレイル王国。
王都アレイズ。
朝日が上るよりも早くに、アレストレイル王国軍に所属するエストレアは目を覚ました。
ベッドから起き上がり、ベッドの横の小物置きから眼鏡を取り、掛ける。
そして、ベッドから降りるとコートのような軍服を腕は通さずに羽織った。
長い銀色の髪を後ろで結い、机の上に置いていた読みかけの小説に手を伸ばす。
ふと覗いた鏡に映る自分の紅い瞳が、自分を覗く。
「今年で24か、そろそろ結婚しないと父さんや母さんに心配掛けるな」
鏡から目を離し、自室のドアを開け、エストレアは自宅のテラス目指して歩き出した。
暗い廊下に灯った発光系魔鉱石が足元を照らす。
しばらく歩き、階段を上がると、そこにエストレアより早く目覚め掃除に勤しむ使用人が一人。
「おはようございますエストレア様、今日もお早いお目覚めで」
「君には負けるよ、いつもご苦労様」
「勿体無いお言葉でございますエストレア様、テラスの方は準備出来ておりますので、ごゆっくりどうぞ」
「ありがとう」
屋敷の使用人と挨拶を交わして向かったテラスは、確かに綺麗に掃除されていた。
テラスの真ん中に置かれた木のテーブルの上には花瓶が置かれ、中には賑やか過ぎない程度に花が刺されている。
「さて、どこまで読んだっけかな?」
エストレアが持ってきた本を開く。
辺りはまだ薄暗くて文字が読みにくい。
しかし、それは承知の上。
エストレアは空中に手を翳す。
そして、その手に魔力を集中させ、光球を作り出すと、それを宙に留め、灯りとした。
椅子に腰を掛け、足を組み、ページを捲っていく。
これが代々王家に仕えるヴァイス家の嫡男、エストレア・ヴァイスの朝の日課である。
最初のコメントを投稿しよう!