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エストレアが朝早くから本を読むのには訳がある。
毎日午前8時までに、仕事に出向かなければならないのだ。
仕事が終わっても家の事もあって、ゆっくり自分の時間を取れるのが朝しか無い。
そして、今日は新人の入隊日でもあった。
エストレアは懐中時計を取りだし、針が午前7時を指しているのを確認すると、本を閉じ、テラスの手摺に向かって歩き出した。
「僕の部隊にはどんな新人が入隊するのかな、っと」
そう呟くと、エストレアは手摺に手を掛け、そして、あろうことかソコから飛び降りた。
大きな屋敷の二階のテラスから飛び降りたのだ、普通なら無事では済まない。
死ぬことはないが、怪我をしてもおかしくはない。
しかし、エストレアの体はまるで一枚の鳥の羽のようにゆっくりと地面に着地した。
「行ってらっしゃいませエストレア様」
着地したのは玄関前、そこには使用人達が数人並び、エストレアに頭を下げていた。
これも毎日の事のようだ。
「行ってくるよ、今日の夕食楽しみにしてるからね」
軍服の袖に腕を通しながら言うエストレアの顔は晴れやかだった。
今が戦時だとは思えない程に。
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