序章・天覧試合に武を競う

2/6
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
肥沃にして豊潤な大地がどこまでも広がる大陸、大瑞原(たいずいげん)。 数多の国が栄枯盛衰を繰り返すこの地は、今まさにその覇権を巡る戦乱の只中にあった。 大瑞原南方の国・斉陵(せいりょう)は、四竜峯(しりゅうほう)と呼ばれる険しい連山の谷間にあった。 また王の都・蓬都(ほうと)は白蛇江(はくだこう)という大河に守られた要害の地にあって、他国の侵略を退けつつ大瑞原統一を目指す大国の一つであった。 その日、蓬都の王宮・河昌宮(かしょうぐう)にて、天覧試合が催されていた。 河昌宮の一画にぐるりと櫓を巡らした闘技場が造られ、蓬都のみならず斉陵の地方各郡から推挙された武将が、槍、剣、弓の腕を競う。 闘技場内は、蓬都や地方から集まった文官や武官の熱気に包まれていた。 中央の一段高い櫓には玉座が置かれ、斉陵王・成崇(じょうすう)が座して、武将達の華麗な武芸を満足げな笑みを浮かべ見ていた。 闘技場の西門から、一騎の武将が躍り出た。 鎧兜を纏って馬に跨がり、槍を携えたその勇ましい姿に歓声が上がる。 将の名は伍広(ごこう)、斉陵の騎馬将軍の一人で、軍でも一、二を争う槍の使い手だ。 天覧試合の中でも、騎馬武将による槍試合は一番の見物であった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!